こういう離婚事件がありました。
高齢の女性(妻)からのご依頼でした。いわゆる熟年離婚です。
長いこと家庭内別居が続き、夫婦関係は冷え切っていました。
ですが、老後の生活不安もあって離婚まで踏み切れず、他方、夫からも強く離婚を求められるまでには至らず、不仲なまま年月が過ぎていました。
しかし、ある日、夫が離婚調停を申し立てました。
妻が慌てて弁護士を探し始め、ご縁あって当職が依頼を引き受けました。
離婚調停を申し立てられたのに対し、妻からは婚姻費用(生活費)分担調停を申し立てました。
夫は住宅ローンを支払っていることもあって、これ以上は支払わないと強く主張し、結局、婚姻費用(生活費)については調停では決着がつかず、審判(※)に移行しました。
審判でも、夫は住宅ローン以外には婚姻費用(生活費)を支払わなくて良いと強く主張しました。
ですが、こちらは粘り強く、当方に有利な理論を文献から引用するなどして戦いました。
その結果、算定表から一定額を控除した金額(月額・数万円)の支払いを命令してもらうことができました。
このケースはその後、離婚訴訟に進みました。
婚姻費用事件で有利な決定を得たこともあり、お客様優位に訴訟を進め、解決することができました。
夫が自宅の住宅ローンを支払っていたので、こういう場合、適正な婚姻費用(生活費)の計算は複雑になります。
弁護士が正しい知識をもって適切に検討をしないと、相手の主張どおりになってしまいます。
調停委員でも、このケースの夫と同様、「自宅の住宅ローンを支払っているから婚姻費用を支払う必要はありませんね」と簡単に片づけようとする人を時々見かけます。
離婚事件では、婚姻費用(生活費)事件は前哨戦になります。
支払う側(多くの場合は夫)にとって予想外に婚姻費用(生活費)の支払いを命じられると、その後の離婚事件において、多少の妥協をしてでも早く解決したい、という動機付けになります。
他方、もらう側(多くの場合は妻)にとっては、婚姻費用(生活費)をきちんと貰えれば、その後の離婚事件を安心して戦うことができ、不本意な妥協を避けやすくなります。
当事務所では、婚姻費用(生活費)事件が離婚事件において持つ意味を十分理解し、戦うべきときは徹底的に戦います。
例えば、このケースとは別で、夫からのご依頼で、「有責配偶者からの婚姻費用(生活費)の請求であり、権利の濫用であるから、支払わなくて良い」と裁判所に認められたケースもあります。そのケースはまた機会があれば紹介したいと思います。
日本橋きぼう法律事務所 弁護士 東城輝夫
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※ 調停:話し合いで、双方の合意によって解決する手続きです。
審判:裁判の一種です。調停と違い、双方の合意が無くても裁判所が結論を出します。
離婚は調停が不成立になると、新たに裁判を起こす必要があります。
婚姻費用(生活費)は調停が不成立になると、自動的に審判の手続きに移ります。